ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
「ちょっと。実の部分までむいてるよ」
「だってー。ねー、ピーラー買おうよ~。包丁だと難しいって」
バイト休みの今日。
私は、母の隣で夕食の準備を手伝っていた。
父も今日は早く帰って来るらしい。
私は事前にあることを父に相談していた。
父は少し悩んでから、
『父さんは彼を1人の男として認めてるし、感謝もしてるから。今度はこっちが助けてあげないとね』
と言ってくれた。
「ねー、お母さん」
「何? 次はにんじん切って」
「はーい。……お母さんは覚えてる? 一吾くんのこと」
「ああ。昔、家によく来てた子ね」
母はコンロに鍋を置いて火をつけ、
私は包丁をにぎり一口大に野菜を切った。
「お母さんって、あんま一吾くんのこと良く思ってなかったよね」
「別に? あの子のお母さんが苦手だっただけ」
「どうして?」
「だってあの人、男と金がなきゃ生きていけないタイプでしょ? 家で一吾くんにケガさせたら金払え~とか言いそうだし」
確かに……と言いそうになり、
私はざくっと音を出してにんじんを切った。