ぼくらのストロベリーフィールズ
「あ……」
街灯に照らされ、エンジンが切られた普通自動車。
車内には中年の男女の姿が見える。
もうすぐ午前1時。
あたりは静まり返っていて、人の気配はない。
その男女は窓ごし5メートル先にいる私たちに気がついていないらしく、楽しそうに笑い合っていた。
次第に、車内の2人は顔を近づけ、キスを交わし始める。
もちろんその男性は、知らない人。
ゆるく拒みつつもそのキスを受け入れているのは、
私の母だった。
「うっ」
気持ち悪い。何これ。
しかも、久々に会えた一吾くんが近くにいるのに。
一吾くんは私の両親を知っている。
あれが私の父では無いことは分かるだろう。
その気持ち悪いカップルは、完全に2人の世界に入っているようだし、
私は気づかないふりをして、一吾くんまた学校でね、と言って家に入ればいいのだ。
でも、できなかった。
何となく予想はできていたけど。
現場を目撃してしまうのは、さすがにショックだった。