ぼくらのストロベリーフィールズ


仕事を理由にPTAや町内会の係は絶対にしないし、


いい企業に勤めている誰かのお父さんと関係持ってたらしいし、などと母は愚痴った。



そして――


「一吾くん自体は、引っ込み思案だけどいい子でしょ? あの母親のもとでちゃんと育って偉いよ」


と母は言いながら、私が切ったにんじんをバターで炒め始めた。



「あはは、そうかも。だって一吾くん、本当に優しくていい人だもん」



「だろうね。母さんだって人の親なんだから、見ればわかるよ」



「しかも今はすっごいイケメンになってるんだよ。相変わらず口下手だけど」



「そうなんだ」



「あの時――私の家がゴタゴタしてた時、ずっと私を支えてくれて。気分転換に銭湯とか牧場とかにも連れてってくれて」



「……へぇ」



「格闘技習ってたとかで家に入った空き巣をどーんと倒してくれたし、私をいじめから守ってくれたし……っ」



「…………」



「優しくて、でも、弱いから、あんなお母さんでさえも助けようとしたんだよ? 本当っ、意味わかんない……うっ」



私は涙をぼろぼろと流しながら、玉ねぎを切り続けていた。



ざくっ、ざくっ、ざくっ、と自分の鼓動と同じくらいのスピードで次々と薄切りにしていく。



「…………」



母は私を止めはしなかった。



カレーに入りきらなかった玉ねぎは、


水にさらして辛みを抜いた後、トマトとかつお節を添えてサラダにしてくれた。






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