ぼくらのストロベリーフィールズ



「じゃあ一吾くんはどうしたい? カフェで休む?」



隣で歩く一吾くんを上目で見る。



すると、彼はちらっと私を横目で見た後、


「確かに。休憩したいかも」


とつぶやき、ぎゅっと手を強く握った。



一吾くんは今、私の家で暮らしている。


部屋は1階奥の和室。


彼は家賃や食費の名目で私の両親に毎月お金を払っている。


でも、実はそのお金は貯めていて、後で彼に全額返す予定であることは内緒。


タバコと酒は辞め、髪色も真黒ではないけど前より暗めへ。


昼はアルバイト、夜は定時制の高校に通う日々を送っていた。



家ではもちろん恋人っぽいことはできない。いや、しない約束にしていた。


だからこそ、今日みたいにデートできる機会はとても貴重だった。



でも。


でも……。



「ちょ、休憩って。何か違うんだけど!」


「ちょっと黙ってて」



一吾くんは慣れた様子で部屋の写真を眺め、1つのボタンを押した。


テンパる私とは対照的に、彼は慣れた様子でフロントでお金を払い、鍵を受け取る。



だって、だって、だって。


ここ、ラブなホテルじゃないですかーーー!?





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