ぼくらのストロベリーフィールズ


部屋は意外とシンプルで、若干ピンクがかった照明の他は、少し豪華なホテルという感じだった。



「あー疲れた。座りっぱなしだったし腰痛い」


「…………」



ベッド横にある広いソファーにだらっと座る一吾くん。


どうしたらいいか分からず突っ立っていると、


「おいで」


と彼は手を伸ばしてきた。



近づいてその冷たい手に触れると、ぐいっとソファーへ引っ張られる。


私は彼のすぐ隣にふわりと腰を掛けていた。



どきどきどきと心臓の音が激しくなっていく。



「ねぇ、こういうとこ来るの、慣れてるの?」


「内緒」


「ん~~~~~」



彼とくっつくことができて嬉しいものの、複雑な気持ちになる私。


構わず一吾くんはころんと横になり、私の太ももの上に頭をのせてきた。


いわゆる、膝まくらの状態へ。



「あったかい」


「……そう?」


「やわらかい」


「……そう?」


「のばらだけ」


「へ?」


「おれ一生のばらとしかこういうことしない」



ぼそりぼそりとつぶやく声に、私の鼓動は高鳴った。


髪の毛を優しくなでると、気持ちよさそうに目を細めた。



そして……



「すーすー」



あー、寝ちゃったか。



部屋に入った時の緊張状態から、次第に心が落ち着いていく私。


横顔しか見えないけど、一吾くんは私の膝の上で気持ちよさそうに眠っている。



しばらく髪に指を通したり、優しくなでたり、を繰り返していたけど、


起こしちゃうかなと思い、ゆっくりと彼の頭から手を離した。



その時だった。



「……っ!?」



びくっと一吾くんの体が震えた。


目を一度大きく開いた後、彼は横目で私に視線を向けた。



あきらかに何かにおびえたような表情をしている。



「大丈夫だよ。私はここにいるよ」



そう伝えると、一吾くんは半目のままで私の手を探ってきた。


その手を握ると、彼は安心したようで再び眠りについた。



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