ぼくらのストロベリーフィールズ
「のばらはどーする?」
尚紀くんがいなくなり、2人きりの部屋。
タバコに火をつけながら、一吾くんはそう言った。
「え、じゃあ私もそろそろ」
「行くの?」
その言葉に、立ち上がろうとした体が動かなくなる。
そっか。
一吾くんはここに1人で住んでいるんだ。
この前は尚紀くんはじめ、みんなでわいわいしていたけど。
タバコの煙と臭いが広がっていく、静かな空間。
キッチンの冷蔵庫が静かにうなる音しか聞こえない。
そういえば今日はお母さん、パートだっけ?
「…………」
私が黙ると、
「腹へった。なんか作って」
と、煙を口から吐き出し、ダルそうに彼はつぶやく。
「……あのさ、それ人に物頼む態度?」
ちょっとイラっとしてしまったが、もしかしたら「バイバイ」って言葉を口にするのが下手なのかもしれない。
私も。一吾くんも。