ぼくらのストロベリーフィールズ


念のためいったん家に帰ると、

母が私の夕飯替わりに置いてくれたらしい1000円札を見つけた。


ラッキーって思ってしまう。


冷蔵庫にあったカレーの固形ルーと野菜を片手に、彼の家に戻った。



しかし――


「あー! よく考えたら炊飯器も米もないじゃん。どーしよう?」


しまった。

ルー用の具材しか持ってきてない。



ご飯買ってこないといけないなー、と思っていたら、


「あ? 確かこの前誰か持ってきたような……」


と言って、一吾くんが近づいてきた。



キッチンは廊下に面していて狭い。


流しの前にいる私のすぐ隣に立ち、彼は上の棚をさぐり始めた。



パーカーに染みついたタバコの臭いと、香水の匂いを感じた。



「あった。チンしとく?」


「あ、まだ大丈夫……っ」



レトルトのご飯を手にした一吾くんと間近で目が合う。


無意識に鼓動が早くなってしまい、急いで手元のじゃがいもに視線を戻した。


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