ぼくらのストロベリーフィールズ
「あの子、一吾狙い?」
「ナズちゃんのこと? ん、まあ、そうみたいかな?」
ドリンクバーにて、尚紀くんからの質問に答えながら、
氷が入ったコップを受け取り、ジュースのボタンを押す。
一吾くんはコーラ、ナズちゃんはカルピスっと。
「俺、一吾はのばらちゃんと付き合うんだと思ってた。初恋の人って言ってたし」
尚紀くんは私を横目で見てそう言い、口角を上げた。
はいー!?
確かにそう言ってたけど。
「いやいやいや! それは子どものころの話で」
「ちょ、のばらちゃんあふれてるから!」
動揺したせいか、ボタンから手を離すことを忘れていた私。
一吾くん向けのコーラが泡を吹きながらあふれ、床にこぼれていた。
「わー! やば、もったいない!」
「あははは! そっち気にするの?」
私のとっさの一言に爆笑しながら、
尚紀くんは、棚にあったおしぼりを私に渡してくれた。
う、きっと尚紀くんにとって、私は妹みたいなものですね。
「そうだ。今度料理のコツ教えてよ~。尚紀くん得意なんでしょ?」
「ん。いいよ。今度俺の家来てみる?」
尚紀くんはジュースが入ったコップを持ち、さらりとそう口にしたから、
一瞬だけドキッととしたけど。
「ま、ガキいっぱいだし、にぎやかすぎるけどね」
と彼は爽やかに続けた。
私は何を身構えたのだろうと、一人でため息をついてしまった。