ぼくらのストロベリーフィールズ
3-2
☆
ごうん、ごうんと音を鳴らしながら、黒や紺の洋服が混ざり合い円を描いている。
奥の方では、知らないおばさんが毛布を大きな洗濯機の中に突っ込んでいた。
「一吾くん、洗濯機持ってなかったんだね」
コインランドリーって初めて来た。
一吾くんは手慣れた様子で、小銭を入れて機械を動かしたのち、
ずっと漫画を読んでいた。
「…………」
私も一吾くんの隣の椅子に腰をかける。
洗濯機と乾燥機が壁際に並べられている店内は、コンビニくらいの広さがあった。
「頭、ちょっとプリンなってきたね」
「もうすぐ染めるよ。バイトの店長にもう少し暗くしろって言われた」
「そうなんだ。てか何で金色にしたの?」
「別に。なんとなく」
「へー」
水がばしゃりと渦を巻く音や、機械と洋服がこすれあう音が、あちこちで鳴っている。
一吾くんは再び漫画の世界に戻っていった、と思ったけど。
「で。どうだった?」
彼は漫画から目を外し、横目で私を見た。
「うん。まー。出てったよ、お母さん」
「ふーん」
「お父さんも今日からまた出張行っちゃった」
「ふーん」
あんまり興味なさそうだなぁと思っていたら、
ピー、ピー、と乾燥が終了した音が店内に鳴り響いた。