ぼくらのストロベリーフィールズ
一吾くんは立ち上がり、
「今日、カレー食いたい」
とぼそりとつぶやいた。
「んー。私この前もカレーだったんだよね」
「じゃあハヤシライス」
「ほとんど一緒じゃん」
「じゃあ何でもいいけど、一番美味しいの作って」
「…………」
何だろう。私が一番おいしく作れるもの。
乾いた服や小物をカゴに入れる一吾くんを見ながら、
私は、ふと、母から教えてもらったレシピを思い出していた。
☆
「ちょっと、勝手に棚に戻さないでよ」
「おれ野菜苦手」
「食べなきゃ大きくなんないよ」
「おれ、たぶん背伸びたらモテすぎて困るわ」
「……あっそ」
いったん洗濯物を家に置いてから、2人で近所のスーパーへ。
せっかく玉ねぎやレタスなどの野菜をかごに入れたのに、一吾くんはそれを次々と棚に戻していく。