ぼくらのストロベリーフィールズ



一吾くんは立ち上がり、


「今日、カレー食いたい」


とぼそりとつぶやいた。



「んー。私この前もカレーだったんだよね」


「じゃあハヤシライス」


「ほとんど一緒じゃん」


「じゃあ何でもいいけど、一番美味しいの作って」


「…………」



何だろう。私が一番おいしく作れるもの。



乾いた服や小物をカゴに入れる一吾くんを見ながら、


私は、ふと、母から教えてもらったレシピを思い出していた。








「ちょっと、勝手に棚に戻さないでよ」


「おれ野菜苦手」


「食べなきゃ大きくなんないよ」


「おれ、たぶん背伸びたらモテすぎて困るわ」


「……あっそ」



いったん洗濯物を家に置いてから、2人で近所のスーパーへ。


せっかく玉ねぎやレタスなどの野菜をかごに入れたのに、一吾くんはそれを次々と棚に戻していく。



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