ぼくらのストロベリーフィールズ


食事中なのに妙な緊張感がただようのも嫌だったので、ふと思ったことを口にしてみた。



「前も思ったけど、一吾くん、手冷たいよね」


「おれ心の中あったかいから」


「あはは、自分で言ってるし」



どこか調子に乗っている発言に、思わず笑ってしまう。



一吾くんはそんな私にちらっと目を向けた後、


「のばらは手あったかいよね」


と言って、テーブルに乗せたままの私の手を握ってくれた。



冷たい彼の手と私の手の温度が混ざり合っていく。



再び、どきどきと鼓動も早くなってしまった。



もう。何考えているかわかんない。


一吾くんって、心は本当にあったかいのかもしれない。



それに対して、私は……。



「私は心の中冷たいのかな」


「さあ。別に冷たいなら冷たいでいいじゃん」


「でも……」


「あーめんどくさ。パスタ冷めるし早く食えば?」



ダルそうな口調でそう言い捨て、すっと一吾くんは私から手を離す。


さっきよりも彼の手は、ほんの少し温かくなっていた。



「ごちそうさま。またよろしく」



皿を空にした一吾くんは、そう言って優しい目を私に向けた。



さっきよりもひんやりとした自分の手を見る。



私は、自分の体温を一吾くんに与え、


その分、彼の心の温もりをもらったように思えた。



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