ぼくらのストロベリーフィールズ







制服越しに感じたのは、この空間特有の壁の冷たさだった。



天井の蛍光灯と窓からの外の明かりが混ざり合っている。


私の中では、めんどくさいことになったかも、と、これはやばいかも、という気持ちがごちゃまぜになっていた。



「ねぇ、本当に違うんだよね?」



昼休みで人気のない、理科室前の女子トイレで。


私はナズちゃんにそう詰め寄られていた。



教室で、のばらちゃんちょっといい? と声をかけられた瞬間、私は怖さを感じた。


たれ目がちなメイクをしているその目は、完全に笑っていなかったから。



「だから私じゃないって! 昨日は普通に家にいたから」



「ホント? 信じていいの?」



「ほら、一吾くん居酒屋でバイトしてるみたいだし、その買い出しだったんじゃない?」



「あ、なるほどね!」



昨日スーパーで私と一吾くんが一緒に買い物をしている姿を誰かに見られたらしい。


情報通の彼女は、さっそくその噂を聞きつけたようだ。



「ナズ、のばらちゃんのこと親友だと思ってるし。違くて良かったぁ!」



明るい声とともに、目に光が灯っていない薄っぺらな笑顔が向けられた。




彼女にはバレてはいけない。


もちろん知られたくもなかった。



一吾くんと半同棲状態なことを。




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