ぼくらのストロベリーフィールズ
トイレからの帰り道、私は中学の時のことを思い出していた。
『スズキ先輩が、のばらちゃんのこと好きらしいよー』
『んなわけないって! だってあの先輩って超モテるじゃん』
『ねーねー付き合っちゃいなよ~』
『いやいやいや、私、先輩のこと全然知らないし!』
スズキ先輩は、サッカー部のイケメンで、学年の壁を越えてモテモテな人だった。
その時は本当に彼のことをよく知らなかったから、そんなやり取りを友達としていたけど。
私は当時バレー部で、部室がサッカー部の隣だったこともあり、
次第にスズキ先輩が私に話しかけてくれるようになった。
面白いし優しいし、サッカー姿は格好良いスズキ先輩に、自然に私も惹かれていった。
ある日、告白をされて、付き合い始めた。
付き合い始めると、先輩のことがもっと好きになった。
休みの日には、2人でデートをしたり、私の家に彼が遊びに来てくれたりもした。
ちょうど母もパートを始めて、家に1人でいることが多かったし。
だけど。
『のばらちゃん、スズキ先輩のこと全然知らない~っ、とか言ってたくせにー』
『やっぱり、顔じゃん? ぶっちゃけ格好良かったら誰でもいい的な~?』
『しかもー噂で聞いたけど、もうやったらしいよ』
『うわそれマジ? 付き合ってそんな経ってないでしょ? 軽すぎー』
『あー確かにあいつ、ちょっとビッチっぽいかも』
クラスの別グループの友達に、トイレでそう悪口を言われていた。