ぼくらのストロベリーフィールズ
母は再び夜の仕事を始めた。
新しい彼氏もできたらしく、家に帰らないこともあった。
前よりもお金はなかった。
母は、自分のお店を持つという目標のため、そして自分を着飾るため、僕に与えるお金を削った。
『お母さん、学校から給食費払えって手紙もらったんだけど』
『何? いくら? 適当に財布にあるやつ取ってって』
仕方がないので、こういう機会に、
こっそり多めにお金をもらって自分のものにするしかなかった。
この頃くらいから、女子に告白をされることが増えた。
同時に、他クラスの問題児っぽい男子から目を付けられた。
ある放課後、学年で一番強いと言われているヤツに、人気のない河川敷に呼び出された。
砂利道に足を踏み入れた瞬間、
そいつの手下2人が僕につかみかかってきた。
なるべくケガをさせないよう、1人をかわして足をかけた後に、もう1人の足元をつかみその場に転ばさせていた。
すると、一瞬ボスが驚いた顔をした、直後。
『うわーー!』と情けない声で叫び、給食袋を振り回してきた。
よけきれないと思い、攻撃を食らう前にそいつの脇腹に一発蹴りを入れた。
『習ったことは人に使うんじゃねーぞ!』
そう力くんのお父さんに強く言われていたが、
これは危険だと本能で判断したのか、とっさに体が反応してしまった。
その給食袋は僕の頭上をかすめた後、倒れゆく彼の手から離れた。
おそらく石が詰め込まれていたのだろう。
地面に落下した時、布の袋にそぐわない重たい衝撃音を放った。