恋に落ちるその瞬間
あんなに誰かと仲よさげに話しているユウを私は初めて見た。
小さくて小動物を思わせる相手の女の子と、背が高くてかっこいいユウの立ち姿。
そんなふたりのお似合いの姿に胸がズキズキと痛む。
あんなに楽そうに……。
身体からチカラが抜け落ちていく。
手先にもまったくチカラが入らない。
でも、身体が、心が、震えているのはわかる。
ーーなにか大切なものを失っていく感覚。
喪失感。
『あっ、ルイちゃん!』
ユウの明るい声が飛んで来て耳に入る。
どこかに飛んでいた意識がふと戻って来て引きつる顔を無理やり笑顔にしてみせる。
……今は気づかないでほしかった。
『ユウ』
『紹介するね!同じクラスのリホ。席がとなりなんだぁ』
……リホ?呼び捨て?
『へぇ、そうなんだ……』
『わぁ、初めて近くで見た!ルイさんってすごく美人ですよね!』
ユルい内巻きのボブが揺れている。
雰囲気がユウと似ている彼女が興奮気味に私に話しかけて来る。
……やだ。話したくない。
やだやだ。
やだ、よ……っ。