恋に落ちるその瞬間
笑え、笑え。
まだ、泣くには早すぎる。
「うん、いいよ?」
ユウの優しい響きの声に、鼻の奥がツーンとしたけど、我慢。
横にいるリホちゃんが首をかしげている。
「ごめん。今だけ、ユウのこと貸してくれる?」
「う、うん……?」
「ありがとう」
不安そうな顔。
この表情をよく私は見て来た。
ユウを、私に取られないか不安なんだよね?
いつもユウのとなりにいて、仲良くしてたから。
でも大丈夫。安心して。
ユウは間違いなくリホちゃん一筋だよ。
私なんかがユウのこと奪おうなんて、できっこないよ。
ユウのこと振り向かせられたのなら、きっとリホちゃんを好きになる前に、私のこと好きになってると思うから。
今日は、なんて天気が良いんだろう。
青空に、まだ蕾をつけたばかりの桜が映える。
温かな光がこぼれる春。
私の心も、不思議と温かいよ。