恋に落ちるその瞬間
「どうしたの、こんなところに呼びだして」
場所を移動して、先に口を開いたのはユウの方だった。
さっきまではあんなに人がいた体育館も、式が終わったあとではすっからかんとしていて、まるでふたりだけの世界に来たような感覚になる。
ユウも、私のいつもと違う雰囲気を感じ取ってか、すこしだけ表情が強張ってるようにも見える。
絞り出した勇気がなくなってしまう前に。大好きな彼と目を合わせて、口を開く。
「私、ユウのことが好きだよ」
この言葉を言うのに、ものすごく時間をかけてしまった。
出会ったその日に恋に落ちて、もう十年が経ったよ。
毎日が幸せで、だけど、切なくて。
ユウに彼女ができてからは、さらに辛くて辛くて仕方がありませんでした。
でも、ね?
ーーあなたに恋をしていた時間は、私の青春のすべてだったんだよ。