恋に落ちるその瞬間



『やり返せばいいのに』


『ううん。やり返して痛い思いさせても、僕、全然うれしくないもん』


『そっか……』



なんて、優しくて穏やかな人なんだろう……。


ビューって吹いた風が、私たちの間を通り抜ける。



『じゃあ、私が守ってあげる』


『え?』


『私が北見くんのこと、守ってあげる!』



……それは、ただの思いつきだった。


だけど、守ってあげたくなったのは事実で。


彼を傷つける、すべてから守りたい。


世界の片隅。
都会でも田舎でもない小学校の端っこ。小さな小さな私の恋心は、正義の味方、ヒーローを生んだ。


真っ直ぐ彼の目を見ると、ニコッと笑って。



『うん!よろしく!』



そう言って、笑ったんだ。


私はいつまでも君が笑ってくれるように、ヒーローになろう。


そう、心に誓った。




< 6 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop