恋に落ちるその瞬間
『やり返せばいいのに』
『ううん。やり返して痛い思いさせても、僕、全然うれしくないもん』
『そっか……』
なんて、優しくて穏やかな人なんだろう……。
ビューって吹いた風が、私たちの間を通り抜ける。
『じゃあ、私が守ってあげる』
『え?』
『私が北見くんのこと、守ってあげる!』
……それは、ただの思いつきだった。
だけど、守ってあげたくなったのは事実で。
彼を傷つける、すべてから守りたい。
世界の片隅。
都会でも田舎でもない小学校の端っこ。小さな小さな私の恋心は、正義の味方、ヒーローを生んだ。
真っ直ぐ彼の目を見ると、ニコッと笑って。
『うん!よろしく!』
そう言って、笑ったんだ。
私はいつまでも君が笑ってくれるように、ヒーローになろう。
そう、心に誓った。