臆病者達のボクシング奮闘記(第五話)
 
 一ラウンド目終了のブザーが鳴った。

 手数が少ない相沢に、堪らず梅田が叱咤した。

「テメーは一年生相手に何やってんだ! 先手を取られっぱなしじゃねーか?」

「すいません。……片桐の出入り(ではいり)が結構良かったんで……」

 健太は踏み込みと共にバックステップも大きい。


「だったら、踏み込ませないようにする方法はあるだろうが」

 梅田に言われた相沢は、ハッと気付いたような顔になった。

「分かりました。アレをもう少し多用します」

「スパーの時くらいは、戦いながら自分で組み立てなきゃ駄目なんだよ」

 梅田は顰めっ面のままだったが、相沢の表情は少し明るくなった。


 二ラウンド目開始のブザーが鳴った。
 
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