ずっと、君に恋していいですか?
午後からの販売促進会議の間、会議の内容に耳を傾けメモを取りながら、志信は時折、薫の様子を窺っていた。

SSで仕事をしている時のつなぎの作業服姿も好きだが、オフィス用の制服に身を包んでいる薫はスタイルの良さも際立ってやっぱり綺麗だと志信は思う。

しっかりとした化粧をしていなくても割と美人なのに、愛想笑いもせずクールなその表情を崩さない薫は、社内ではかわいげがないと言われている。

うんと歳上の上司の前でも臆することなく、堂々と発言する姿はとても凛々しい。

(かわいげないとか…みんな見る目ないよなぁ…。オレの前ではすっげぇかわいいんだぞ?)

会社では見せない笑顔も、二人きりでいる時の穏やかな顔も、キスをした後のとろけそうな表情も、自分だけが知っていると思うと優越感さえ湧いてくる。

薫の横顔に思わず見惚れてしまいそうになり、志信は慌てて手元の資料に視線を落とした。

(あ…これ、薫の担当してるSSか…。)

薫の担当している山手通りSSでは間もなくキャンペーンが始まるらしい。

郊外のSSでは客足が遠のくこの時期、来客数を増やすために景品を出したりするようだが、一度の給油だけではなく、洗車やオイル交換などでも利用してもらえるように、給油量や作業料金に応じてスタンプを押し、その個数によって景品の内容が変わると資料に書いてある。

何度も足を運んでなじみになってもらい、年末の繁忙期に向けて新規の客を増やす作戦なのだそうだ。

(発案者、薫なのか…。)


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