ずっと、君に恋していいですか?
9時前に忘年会が終わり、志信は自宅に向かって歩いていた。

明日も仕事があるので、忘年会は食事がメインでビールを少し飲む程度だったが、酒は明日ゆっくり飲もうと、二次会には参加せず帰る事にした。

志信は歩きながら、薫の事を考える。

薫の方から会いたいと言ってくれたのに、突き放すような言い方をしてしまった。

無理をさせたくないのは嘘ではないが、本当は会いたい。

だけど、会いたいと言えば、また仕事で疲れている薫に無理をさせる事になる。

“会いたい”と言いたい気持ちを抑えようとするほど、薫に対して冷たい態度を取ってしまう。

(せめてもう少し言い方があっただろ…。あれじゃ薫に会いたくないって言ってるみたいだ…。)

帰ったら電話でもしようかと思いながらマンションのエントランスを通り、エレベーターの中でポケットからキーケースを取り出した。

エレベーターを降りて自分の部屋へ向かおうと視線を向けた時、ドアの前でうずくまっている薫の姿に気付いた。

「薫…?」

志信は慌てて薫に駆け寄る。

「志信…おかえり。」

「なんでこんなとこで…。風邪引いたらどうするんだよ?!」

志信が語気を強めると、薫は目を潤ませて、志信の胸に顔をうずめた。

「だって…会いたかったの…。もう会ってくれなかったらどうしようって…。」

「…バカ…。」

志信は薫を強く抱きしめた。

「会いたくないなんて言ってない…。オレも会いたかったよ。だけど…薫に無理させたくなかったんだ。」

「良かった…。」

「とりあえず…寒いから、中に入ろう。」



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