ずっと、君に恋していいですか?
年末はたくさんの客が訪れ、薫はタイヤやオイル交換、洗車などの作業に明け暮れた。

実家から通う事で食事の心配もなくなり、少しゆっくり休めるようになった。

志信とは時々連絡を取る。

久しぶりに会った地元の友人たちと忘年会をしたとか、仲の良かった同級生夫婦の子供がかわいかったとか、甥っ子を遊びに連れていったとか、休暇を楽しんでいるようだった。



大晦日の夜。

仕事を終えて実家に戻った薫を、妹の椿(ツバキ)とその娘の菫(スミレ)が玄関で出迎えた。

「お姉ちゃんおかえり、お疲れ様。」

「ただいま。帰ってたんだ。」

「夕方にね。」

菫が薫に手を伸ばすと、薫は笑って菫を抱き上げた。

「菫、大きくなったねえ。いくつになった?」

「1歳9ヶ月。」

たまにしか会わないのに、菫はやけに薫に懐いている。

薫は菫をだっこしてリビングに向かった。

「おかえり。あら…アンタまたそんな格好で…。」

つなぎの作業服姿で菫を抱く薫を見て、母親は渋い顔をした。

洋服をあまりたくさん持って来なかったので、実家からは作業服で車通勤している。

薫にとっては着なれた作業服も、母親には“女らしくない、また婚期が遅れる”と煙たがられる。


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