ずっと、君に恋していいですか?
3歳下の椿は23歳の時に結婚して、25歳で菫を産んだ。

そしてまたお腹には来年の6月に生まれる予定の二人目の子がいる。

ここ何年かは実家に帰るたびに、結婚を考えている人はいないのかと母親からしつこく尋ねられるのが面倒で、次第に足が遠のいていた。

「相変わらず仕事ばっかりして…そろそろ結婚の話はないの?」

「今はそれどころじゃない。」

薫は椿からビールを受け取りながら、めんどくさそうに答えた。

「それどころじゃないって…。アンタもう30でしょ?うかうかしてるとあっという間に歳取って、貰い手がなくなるのよ!」

「またその話…。」

薫がゲンナリしながらテーブルの上の唐揚げに手を伸ばすと、母親はその手をピシャリと叩いた。

「菫の前でお行儀悪い事しないの!!ちゃんとお箸使いなさい!」

「すみません…。」

椿の夫の啓介(ケイスケ)が、ニコニコしながら箸と取り皿を差し出した。

啓介は椿よりひとつ歳上で、薫より2つ歳下の温厚で真面目な会社員だ。

二人は社内恋愛で結婚し、椿は結婚後も仕事を続けている。

薫は啓介から受け取った取り皿に箸でつまんだ唐揚げを乗せながら、二人がまだ若いうちに結婚を決めた理由はなんだったのだろうと思う。

実家にいた頃は、ろくに家事をした事のなかった椿が、今では働きながら立派に主婦と母親をしている。

(なんでアレコレいっぺんにできるんだろ…要領がいいのかな…?)


< 108 / 187 >

この作品をシェア

pagetop