ずっと、君に恋していいですか?
薫が自分の部屋で帰り支度をしていると、ドアを叩く小さな音がした。

(ん…?)

そっとドアを開けると、ドアの前には菫がお菓子の箱を抱えて立っていた。

「菫か…。おいで。」

菫は部屋に入ってペタンと座ると、小さな手で箱からお菓子をひとつ取り出して、薫の方にその手を伸ばした。

「あーん。」

「ん?くれるの?」

菫は薫にお菓子を差し出してうなずく。

「ありがと。」

薫の口の中にコロンとお菓子を入れると、菫は薫の顔を覗き込んだ。

「おいち?」

「うん。菫が食べさせてくれたから、すっごく美味しいよ。」

(すっごく甘いけど…。)

薫が笑うと、菫も満足そうに笑った。

「かわいいなぁ、菫は…。」

菫の頭を撫でながら、自分にもいつかは子供を産んで育てる日が来るのかな、と薫は思う。

(子供はかわいいけど…私に育てられるのか…?)

「あい。」

菫がもうひとつお菓子を差し出すと、薫はそれを指でつまんで菫の口元に近付けた。

「私はもういいよ。菫の分がなくなっちゃう。ハイ、あーん。」

菫は素直に口を開ける。

(ホントにかわいい…。)

小さな口にお菓子を入れてやり、薫は愛しそうに目を細めた。


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