ずっと、君に恋していいですか?
薫が菫を眺めていると、ドアをノックする音がして、ドアが開いた。

「お姉ちゃん。あ、菫来てたんだ。」

「うん。お菓子くれた。」

「へぇ…珍しいね。このお菓子、菫のお気に入りでね。私がちょうだいって言ってもなかなかくれないんだよ。」

「そうなんだ。そんなお気に入りのお菓子くれてありがとね、菫。」

菫はおいしそうに、口をモグモグさせている。

「菫、夜だからもうお菓子はおしまいね。」

「おちまい?」

「そう、また明日にしようね。お菓子さんバイバイは?」

椿がお菓子の箱を取り上げると、菫は少し寂しそうにお菓子に手を振る。

「ばいばーい。」

「あら、珍しく素直…。えらいね、菫。」

昔はわがままで泣き虫な小さな妹だったのに、すっかり母親になったなと、薫が不思議な気分でその光景を見ていると、椿は薫の方を見て笑った。

「お母さんとおばさんは相変わらずね。」

「うん…。顔見れば結婚はまだかって…。まさかお見合いまですすめられるなんて…。」

薫は菫を膝に乗せて頭を撫でた。

「付き合ってる人、いるんでしょ?」

「うん…いるよ。」

「どんな人?」

薫は菫の髪をさらさらと手で梳きながら、志信を思い浮かべた。

「優しいよ、すごく…。一生懸命仕事してる私が好きだって…かわいいって言ってくれる。」

「素敵な人なんだね。」

「うん…。私にはもったいないくらいね。」

いつになく穏やかな表情で話す薫を見て、椿は嬉しそうに笑った。



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