ずっと、君に恋していいですか?
SS部販売促進課では、1月から産休に入る予定だった女性社員が一人いたのだが、年末の繁忙期を過ぎれば仕事が少し手薄になるので、春までは残りのメンバーで間に合うと人事部が判断して、人事異動の予定はなかったらしい。

しかし、同じ販売促進課の若い女性社員が、妊娠と結婚を理由に1月末で退社する事になった。

いわゆる“できちゃった結婚”というやつだ。

1月末で退社という形にはなっているが、つわりによる体調の悪さから、1月は残りの有給を全部使って休む事になったので、実質は既に退社しているようなものだ。

想定外の欠員に加え、薫が山寺SSで打ち出したキャンペーンが、郊外の全SSで展開される事が今朝の幹部会議で社内決定し、販売促進課の人員不足が問題になった。

人事部が社員の適性や勤務希望の条件などを考慮の上、新人事を決定して異動させるまでの間、仕事の内容的に繋がりの深い販売事業部から一人、応援に駆け付ける事になったらしい。

そこで上田部長が選んだのが志信だった。

(なんでオレ…?)

販売事業部にあまり必要とされていないのかもと志信は思ったが、もちろんそういうわけではない。

郊外のSSでの4年間の勤務経験と、その他にも性格や普段の仕事ぶりを見て判断したと上田部長は曖昧な事を言っていた。

「ほんの数日か、せいぜい1週間ほどだと思うから助けてやってくれ。」

「わかりました…。」

「しかし君の同期の卯月くんはすっかりマネージャー業に馴染んでるね。」

「え?」

「代理じゃなくて、そのまま山寺SSのマネージャーになるか、売り上げが低迷してる他のSSのテコ入れのために異動って事も有り得るね、マネージャーとして。」

「はぁ…。」

(再生請負人…?薫ってそんな事もできるのか…?)




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