ずっと、君に恋していいですか?
まだ付き合い始める前、志信は長い間ずっと、薫に片想いをしていた。

薫は過去のつらい経験から社内恋愛なんて有り得ないと言っていた。

好きだと言って拒まれるのが怖くて、少しでも一緒にいたくて、いつかは自分の方を見て欲しいと思いながら“ただの仲の良い同期”を装っていた。

やっと少し距離が縮まったと思ったら線をひくように突き放され、何度も胸を痛めながら、やるせなさにため息をついた。

薫が元カレとよりを戻したと勘違いして落ち込んでいた時、元気のない志信を励まそうと、石田たちが鍋パーティーをしようと志信の部屋に押し掛けた事があった。

薫にプレゼントするつもりで用意していたウサギのネックレスと、薫への素直な想いを綴った手紙を石田が見つけた時、志信は“もう必要ないから彼女にでもあげて”とネックレスを石田に渡し、手紙をゴミ箱に捨てた。

石田は志信に気付かれないようにこっそりと手紙をゴミ箱から拾って持ち帰り、それを梨花に託した。

梨花は薫のつらかった過去の恋の話と志信への想いを聞き出し、石田から預かったネックレスと手紙を薫に手渡した。

志信の気持ちを知った事で、薫はようやく志信を“ただの同期”としてではなく、一人の男性として好きだと認め、梨花の後押しでその想いを志信に告げた。

長かった片想いに終止符を打って薫と恋人同士になれた後も、些細な事ですれ違って薫を悲しませてしまった時には、梨花が二人の間に入って誤解を解いてくれた事もあった。

そんなわけで志信は、石田と梨花には頭が上がらない。


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