ずっと、君に恋していいですか?
志信が社用車からタイヤを降ろしている間に、薫はサービスルームの中のデスクで伝票をチェックして受領印を押す。

控えの伝票を持ってグランドに戻った薫は、それを志信に差し出した。

「ハイ、伝票の控え。」

「うん。なんか、ここでもインフルエンザ流行ってるって?」

伝票を受け取りながら志信が尋ねると、薫は眉間にシワを寄せた。

「そうなんだよね。そういう時期だから仕方ないと言えば仕方ないけど…。」

「薫も気を付けろよ。」

志信が思わず“薫”と呼ぶと、薫は少し笑った。

「笠松くんもね。」

「ああ…そうか。卯月さんだった。キャンペーン、うまくいってるんだな。」

「うん、まあまあかな。最近、SS部の販促課手伝ってるんでしょ?この間、青木部長が来た時に聞いたよ。」

薫の思わぬ言葉に、志信は驚いた顔をしている。

「青木部長、なんか言ってた?」

「よく頑張ってるって。SS部に欲しいって言ってた。」

「そっか。だったら期待に応えて頑張るかな。じゃあそろそろ戻るよ。」

「ありがとね。」

「うん。無理すんなよ。」


志信は社用車で本社に戻りながら、ぼんやりと考えていた。

(オレ、もしかして本当にSS部に異動になったりして…。そうなると…薫はオレの上司…。オレは薫の部下…。なんか複雑…。)

ただでさえ社内格差が大きいのに、これで薫が直属の上司になんてなった日には、結婚どころじゃないと志信は思う。

(やっぱり二人とも元の部署に戻るのが一番か…。そうすれば前みたいに一緒にいられるもんな。)





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