ずっと、君に恋していいですか?
翌日。

志信は、喫煙室で火のついたタバコを片手に、呆然と一枚の紙切れを見つめていた。

火をつけて手に持ったままのタバコは音もなく燃え続け、長くなった灰がその重さに耐えかねてポトリと落ち、床を白く汚した。

(まさか…ホントにこんな日が来るなんて…。)

短くなったタバコに口をつけ、深く煙を吸い込んで、水の入った灰皿に投げ入れる。

そしてまた、呆然とその紙切れを眺めた。

そこには、“辞令”の文字が並んでいた。




昼休み。

志信は社員食堂には向かわず、休憩スペースでコーヒーを飲んでいた。

薫になんと伝えようか。

辞令の事を伝えたら、薫はなんと言うだろう?

薫の事ばかりが頭をよぎる。

とりあえず、話してみなければどうにもならない。

電話やトークメッセージではなく、会って直接話そう。

志信はポケットからスマホを取り出し、今夜薫の部屋で待ってる、とメッセージを送った。




薫は少し遅い昼休憩を取りながら、スマホの通知ランプが点滅している事に気付いてトーク画面を開いた。

(志信…?どうしたんだろう?)

今夜は閉店まで仕事があるので帰りが遅くなる事と、明日からの二日間は大阪支社でのマネージャー会議に出席するため大阪に出張する事を伝えた。

ほどなくして、大阪から帰ってからでいいと志信から返事があった。

薫は、志信の用はなんなのだろうとなんとなく気になりながら、急いで昼食を済ませ、明日からの会議に必要な資料の準備に取りかかった。






< 131 / 187 >

この作品をシェア

pagetop