ずっと、君に恋していいですか?
「そろそろ大丈夫ですね。」

ちょうど良い加減に煮えた具材を、一番後輩の三井が先輩たちの器に取り分ける。

石田は絶品と噂のつみれを箸でつまみ上げ、志信の方を見た。

「笠松と卯月さん、付き合ってどれくらいになる?」

「5ヶ月くらいです。」

「まだそんなもんか。オマエらが二人で飯食ってるの見てたら、もうずっと一緒にいるみたいだな。」

「そうですか?」

「おう、熟年夫婦みたいだったぞ。」

「まだ結婚もしてないのに熟年って…。せめて普通の夫婦にして下さい。」

志信は少し照れ臭そうにそう言って、器の中で美味しそうに湯気をたてている鶏肉に箸をつけた。

(結婚かぁ…。)

箸をつけたまま鶏肉をじっと眺めて考え込むそぶりを見せる志信に、前川は怪訝な顔をする。

「どうした?食わないのか?笠松、猫舌だっけ?」

「いや…そういうわけじゃないけど、ちょっと…。」

志信は歯切れの悪い返事をして、ようやく鶏肉を箸でつまみ上げて口に運ぶ。

「やっぱりここのちゃんこ鍋は美味しいですね。今度、連れてきてあげようかな。」

三井がニコニコ笑いながら白菜を口に運ぶと、石田が楽しそうに笑う。

「篠塚さんか。」

「ええ。今度はみんなで一緒に来ますか?」

「それいいな。鍋はやっぱ大勢でするのがいいんだよな。」

大勢でワイワイ楽しむのが好きな前川がすぐに賛成した。

「前川はさあ、戸部さんとうまく会話噛み合うのか?」

「は?普通に会話してるけど?」

「そうか。それならいい。」

石田の言葉の意味が心底わからないと言いたげに、前川は首をかしげた。


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