ずっと、君に恋していいですか?
誕生日はいつ?と志信に聞かれ、答えるついでに志信の誕生日をなんとなく聞いた。

その時志信は確かに、2月8日だからまだ先だと言っていた。

世間のカップルが盛り上がるようなイベントや記念日のお祝いに疎い薫は、恋人の誕生日や記念日を指折り数えて楽しみに待った経験がない。

それは志信と付き合うようになってからもずっと変わらず、世間のカップルが最も盛り上がるイベントであるクリスマスイブさえ、仕事にかまけて忘れていた。

誕生日を思い出すどころか、その日志信が福岡に行く事さえ、直前まで気付かなかった。

(あの日は志信の誕生日だったんだ…。それなのに私…!)

志信にひどい事をしてしまったと、薫は悔やんでも悔やみ切れない。

こんな事だから志信に愛想をつかされたのだと、自分で自分が情けなくて、こらえていた涙が溢れてこぼれ落ちた。

「それで卯月さん…。笠松さん福岡に行っちゃいましたけど、卯月さんは…。」

梨花が言いにくそうに切り出した。

薫はおしぼりで目元を押さえながら自嘲気味に小さく笑みを浮かべた。

「…フラれちゃった。」

「えっ?!」

「当たり前だよね…。遠くに転勤になったらどうする?って聞かれても、仕事の事考えたら何も答えられなくて…。あの日も仕事でいっぱいいっぱいになりすぎて、志信の誕生日だった事も…それどころか福岡に行く日だって事さえ、志信が新幹線に乗る直前まで気付けなかったんだもん…。ひどいよね。愛想つかされて当然だよ…。」



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