ずっと、君に恋していいですか?
どうせこの人と結婚する気などないのだし、会うのはきっと最初で最後だ。

体よくこの話を断ってもらうには、普段通りの自分を見せた方がいいのかも知れない。

「じゃあ…お言葉に甘えて。」

薫はおもむろにビールをグラスに注ぎ、一気に飲み干した。

そしてまたグラスにビールを注ぐ。

「薫…!!」

母親が慌てて薫を止めようとした。

「何やってんの…!!」

「え?普段通りでいいって。あ、おばさん、灰皿取って。」

薫はそう言いながら、目の前にある前菜に箸をつけた。

「薫ちゃん…!!」

おばさんはあたふたしている。

そんな様子を見て、静間はおかしそうに笑った。

「とりあえず、難しい話は無しにして食べましょう。僕もお腹が空きました。」

「え?あ、ハイ…。」

おばさんはうろたえながらも、静間の言葉におとなしく従う。

薫は料理を口に運びながら、チラリと静間の様子を窺った。

(さすがに対処の仕方が大人だな…。そつがないって言うか…。)


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