ずっと、君に恋していいですか?
自己紹介もそこそこに、食事会と称したお見合いは始まった。

食事をしながら、おばさんと母親は、静間に仕事や趣味などの事を尋ねる。

本来は薫がそうするべきなのだろうが、薫はひたすらビールを飲みながら料理を口に運んでいた。

「薫さんはガソリンスタンドの会社でお勤めされてるんですよね。」

静間に尋ねられると、薫は口の中の刺身を飲み込んで、ハイ、とだけ答えた。

「どんなお仕事ですか?」

「いろいろです。」

「仕事、楽しいですか?」

「ハイ。」

会話を広げようとしない薫に、おばさんも母親も呆れた顔をしている。

薫はグラスのビールを飲み干し、またグラスにビールを注いだ。

「お酒、強いんですね。」

「普通です。」

「趣味はなんですか?」

「仕事です。」

無愛想に答える薫に、静間は楽しそうに話し掛ける。

「お休みの日はどうしてますか?」

「寝てます。」

薫の隣で、母親は料理を口に運びながら恥ずかしそうにしている。

おばさんはもうあきらめたのか、黙々と食事をしている。

薫は尋ねられた事に無愛想に答える以外は何も話さない。

それでも静間はイヤな顔ひとつせずに、食事をしながら終始笑顔で薫に話し掛けた。


< 151 / 187 >

この作品をシェア

pagetop