ずっと、君に恋していいですか?
食事が終わると、薫はビールを飲みながらタバコに火をつけた。

お見合いの席で、初対面のお見合い相手の前でタバコを吸う女なんて絶対引くよね、などと薫が考えていると、静間はジャケットの内ポケットからタバコを取り出した。

「僕もタバコ吸っていいですか?」

「どうぞ。」

薫が灰皿をテーブルの真ん中に寄せると、静間はタバコに火をつけた。

「最近はどこに行っても灰皿がない店が多くて困りますよね。」

「私は灰皿のない店には行かないので困りません。」

「そうですか?僕の会社には喫煙室もなくて、喫煙者は肩身が狭いんです。薫さんの会社はどうですか?」

「うちは喫煙者の多い会社なので、喫煙室は各階にあります。」

「いいですね。うらやましい。」

相変わらず尋ねられた事だけに答えてはいるものの、明らかに少しずつその答えの語数が増えている。

なんとなく会話の続いている二人を残して、おばさんと母親は席を外した。

(二人にする必要なんてないのに…。)

これがテレビなんかでよく見る、“あとは若いお二人で…”というやつだな、などと思いながら、薫がグラスのビールを飲み干すと、静間が空いたグラスにビールを注いだ。

「どうも…。」

「ビール、もうなくなっちゃいましたね。僕ももう少し飲みたいので、もう1本頼みますね。」

「はぁ…。」


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