ずっと、君に恋していいですか?
こんな失礼なお見合い相手に、イヤな顔ひとつせず付き合ってくれるなんて変わった人だと薫は思う。

いい人なのだろうとは思うが、だからと言ってこの人と恋愛や結婚をする気はない。

(いい人っていうのはホントかも…。こんな良さそうな人なら、お見合いなんてしなくても、結婚相手くらいいくらでもいそうなのに。)

自分が心配しなくても、この人ならきっと、かわいくて素敵なお嫁さんをもらうだろう。

もう二度と会う事もないだろうし、自分には関係ない。

そんな事を思いながら、ポツリポツリとたいした事のない会話を交わし、一緒にビールを飲んだ。

しばらくして店を出ると、静間はおばさんと母親に挨拶をした後、薫の目を見てにこやかに笑った。

「今日は薫さんとお会いできて、とても楽しかったです。また、お食事でもしましょう。」

(えーと…社交辞令かな?)

「ありがとうございました。」

またお食事でも、という言葉にはハッキリ返事をせず、薫は当たり障りなくお礼を言った。

「今度はもっと気楽に楽しめる居酒屋にでも行きましょうね。」

「はぁ…。」

薫がイエスともノーともとりがたい気の抜けた返事をすると、静間は笑って去って行った。

遠ざかっていく静間の背中を見ながら、母親がため息をつく。

「ホントにいい方ねぇ…。薫、アンタあれは一体なんなの!!」

「なんなのって…。だから、普通。」


< 153 / 187 >

この作品をシェア

pagetop