ずっと、君に恋していいですか?
翌週の金曜日。

薫が定時で仕事を終えて会社を出ると、誰かが後ろから肩を叩いた。

(志信…?)

振り返ると、そこに立っていたのはもちろん志信ではなく、にこやかに笑みを浮かべた静間だった。

「あ…。」

(志信じゃない…。当たり前か…。)

「薫さん、一緒にお食事でもどうですか?」

「えーと…?」

なぜここに静間がいて、自分を食事に誘うのだろう?

薫が困惑していると、静間は笑って頬をかいた。

「あ、すみません、ビックリしちゃいましたよね。僕の勤め先もこの近くなんです。また薫さんに会いたいって薫さんのお母さんに言ったら、前もって連絡すると逃げるから、このくらいの時間に会社の前で待ってるといいって言われたもので。」

「えぇっ…。」

(お母さん…!!なんでそんな事を…!!)

「迷惑でしたか?」

「そういうわけでは…。」

母親に言われた通り、暑い中わざわざ待ってくれていたのに、すげなく追い返すのも気の毒だ。

(仕方ない…。今日だけ…。)

「居酒屋にでも行きませんか?」

「…わかりました。」


会社の前で話しているだけでも、退社する社内の人たちにジロジロ見られていたのに、二人で飲んでいるところを見られたら、どんな噂を流されるかわからない。

薫は社内の人たちの目を避けて、会社から少し離れた居酒屋に静間と一緒に足を運んだ。



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