ずっと、君に恋していいですか?
店に入ると、案内されたテーブル席に向かい合って座り、ビールと料理を適当に頼んだ。

相変わらず無愛想な薫に、静間は懲りもせず笑って話し掛ける。

「僕、薫さんの事、前から知ってたんです。」

「え?」

「社用車で給油に行った時に、何度か見掛けました。」

「そうなんですか?」

意外な事を言われ、薫は少し驚いた。

「あいにく僕の接客に当たってもらった事はないんですけどね。楽しそうに仕事する人だなって、いつも思ってたんです。」

「はぁ…。」

「赤松さんから、姪っ子とお見合いしないかって写真を見せてもらった時、すぐに気付きましたよ。薫さんと、ちゃんと会って話してみたいって思ったんです。」

「会ってがっかりしたでしょう。普段の私はこんなですから。」

「いえ、嬉しかったですよ。うわべだけ取り繕っていい顔されるより、普段通りの薫さんが見られて。」

「……変わってますね。」

「そうですか?」

「私は女らしくないし、無愛想でかわいげもないし、一緒にいてもつまらないでしょう。」

「いえ、楽しいですよ、すごく。だからまた会って、もっと薫さんを知りたいと思いました。」

「…やっぱり変わってると思います。」

気の利いた事のひとつも言わないし、愛想よく笑ったりもしないのに、一緒にいて何が楽しいのだろう?

(それでも志信は、好きだって言ってくれたんだっけ…。)

薫はジョッキを傾け、また溢れそうになる涙をこらえた。



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