ずっと、君に恋していいですか?
「薫さん、好きな人がいますか?」

「え…。」

唐突な静間の言葉に、薫は何も言えずうつむいた。

少しの沈黙の後、薫はタバコに火をつけて、煙を吐き出した。

「…なんでそんな事聞くんですか。」

「言ったでしょう?もっと薫さんの事を知りたいって。もしかしたら、好きな人がいるから僕は拒絶されてるのかなーって。」

(気付いてるんじゃない…。)

「その人とお付き合いされてるんですか?」

「……いえ、今は…。」

「今は、っていう事は…僕にもまだ望みはありますか?」

へんに期待させるのは逆に失礼だと、薫は静間にまっすぐ向き合った。

「それはありません。私はもう恋愛も結婚もする気はないので。」

「その人が忘れられないから?」

「……。」

これ以上何も話したくなくて、薫は勢いよくビールを煽り、ジョッキを空けた。

「ごめんなさい。やっぱり帰ります。もう今日みたいな事はやめて下さい。」

薫が伝票を持って立ち上がると、静間がヒョイとそれを取り上げた。

「誘ったのは僕ですから。」

「でも…。」

「いいんですよ。」

多くは語らなくても、静間は穏やかに笑みを浮かべて薫の気持ちを察する。

(この人は大人だな…。)



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