ずっと、君に恋していいですか?
「すみません…。それで、その人とお見合いしたんですか?」

「その時はお見合いなんてしないって断った。でもこの間、母親に食事しようって呼び出されて…。行ってみたら勝手にお見合いセッティングされてて…。」

「で、お見合いしたと。」

「お見合いって言うか…ただ食事して少し話しただけ。間違いなく先方からお断りされるだろうし、会うのは最初で最後だと思ったんだけど…。」

「お断りじゃなかったんですね。」

「母親に入れ知恵されて、突然押し掛けてきた。食事しようって。」

梨花はうなずきながら、薫の顔をじっと見ている。

「それで居酒屋に行ったんですか…。で、卯月さんもまんざらじゃないという事ですね?」

「そんな事言ってないでしょ。また会えるかって聞かれたけど断った。でも、話が通じてないみたいだった。」

「断っちゃったんですか?もったいないですね。良さそうな人だったのに。」

梨花の言葉に、薫はひとつため息をついた。

「……恋愛とか結婚とか…もう考えられないから。」

「そうなんですか?」

梨花がけろりとした顔でそう言うと、薫はイスをクルリと梨花の方に向けた。

「あのね…さっきから何が言いたいの?私があの人と付き合うのを止めたいの?すすめたいの?」

「どっちでもないですよ。それは卯月さんが決める事ですから。ただ、誰なのかなぁって気になっただけです。」

「じゃあもういいでしょ?あの人とはなんでもないから。」

薫は無理やりこの話を打ち切り、パソコンに向かった。

社員コードを入力して、今日のスケジュールを確認する。

「卯月さんが後悔しないなら…ホントに幸せになれるなら、私はそれでいいです。」

そう言って梨花はパソコンに向かった。

薫の頭に、梨花の言葉が何度も響く。

(後悔しないなら…って…。)





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