ずっと、君に恋していいですか?
その日の昼休み。

志信は昼休みが始まって15分ほど経った頃に社員食堂の席に着いた。

その隣には渚の姿がある。

「日替わり買っといたよ。」

「ありがとう。」

少し仕事が長引いたので、先に行って日替わり定食を買っておいてくれるように渚に頼んであった。

転勤後すぐは知り合いが渚しかおらず、志信のいるSS部と渚のいる広報部のオフィスが隣同士な事もあり、必然的に渚と話す機会が多くなった。

そして気が付けば、いつの間にか渚と昼食を一緒に取るのが当たり前のようになっていた。

渚とは社員食堂で一緒に昼食を取ったり、時々二人で夕飯を食べたり飲みに行ったりする事はあるが、昔付き合っていたとは言え、今は同僚以上の関係ではない。

渚もあれから一度も、好きだとか付き合いたいとか言わない。

志信は渚といる時、たまに“薫”と呼びそうになって、慌てて口をつぐむ。

渚は気付いていないのか、もしかすると気付いていないふりをしているのか、何も言わない。

志信は渚と食事をしている時、今でも自分の隣にいるのが薫じゃない事が不思議だと思う。



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