ずっと、君に恋していいですか?
「君が頑張ってくれるのは、上司としては嬉しい限りなんだがね。」

「…何か?」

「大事なものを犠牲にしてまで、君一人が無理して全部背負う事はないんだよ。」

「えっ…?」

「君が高校生になったばかりの頃から見てきたんだ。私にとって君は、娘同然だからね。幸せになって欲しいと思ってるよ。」

青木部長は薫の肩をポンポンと叩いた。

「私は君を会社に縛り付ける気はない。会社には代わりの人間がいても、君の幸せを掴むのは君しかいないんだよ。」

「幸せってなんでしょう…。私はこの仕事も、会社も、好きですよ。だから捨てられなかったんです。大事なものほど、失ってからじゃないと気付けないなんて、皮肉ですね。」

薫はそう言って、コーヒーを飲んだ。

「今度チャンスがあったら、何が一番大事か、心の命ずるままに動いてみたらどうだい?」

「…覚えておきます。」

薫は少し笑みを浮かべてパソコンに向かった。

青木部長の言葉は、薫の肩に重くのし掛かった物を、少し軽くしてくれた。

(心の命ずるままに動いてみたら…か…。そんなチャンスがまたあれば、の話だけど…。)





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