ずっと、君に恋していいですか?
薫の背中に腕をまわし、キスをしながら、志信はふと気付く。

「ね…。なんであれ、着てくれてないの?」

「あれ?」

「`アナスタシア´の…。」

「ああ、あれね。」

薫は少し身を起こして志信の顔を見た。

「あれはね…志信と一緒に着たいから、欲しいって言ったの。」

「そうなの?」

「うん。志信がいないのに一人で着たって悲しいだけだもん。着られなかった。」

その言葉を聞いて、一人で泣いている薫の姿が思い浮かんだ。

(そうだった…。薫、泣き虫なんだ…。)

「…もしかして、泣いてた?」

「ん…?うん…。悲しくて、寂しくて…志信に会いたくて、毎晩ずっと泣いてた。」

薫は少し恥ずかしそうに笑う。

「ごめんな。薫の話も聞かないで、一方的に薫を突き放して終わらせたのはオレの方なのに…オレもずっと会いたかった。薫の事、好きで好きで…忘れられなかった。」

「福岡で、新しい彼女はできなかったの?」

薫の予想外の言葉に志信は思わず吹き出した。

「気になるの?」

「だって志信モテるし…。福岡支社に昔の彼女もいるって前に言ってたから…。」

「ああ…うん。好きだって言われたけど…オレは薫の事しか考えられなかったから。そしたらさ…そんなに好きならちゃんと伝えたらって言われたんだ。」

「ふーん…。」

薫は少し眉をひそめて、複雑そうな顔をしている。




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