ずっと、君に恋していいですか?
志信はひとり、喫煙室でタバコの煙をぼんやりと眺めていた。

午後からの仕事も手につかない様子の志信を見かねた石田が、タバコでも吸って来いと促したのだ。

(主任どころじゃないよ…。部長補佐ってなんだ…?)

ありさが言うには、現場を離れたくないと管理課の課長になる事も販売促進課の課長になる事も拒んだ薫を、青木部長が補佐として手元に置く事で、3つの課にまたがり薫の実力をフルに発揮できるとの判断で人事部に交渉してまで与えた役職らしい。

(薫はオレと同期だぞ…?だいたい青木部長っていくつだ?50歳前後?)

薫がかつて付き合っていた浩樹が33歳で本社経理部の課長になった時には、異例の若さでの出世だと周囲を驚かせた。

思えば志信の部署の主任も30代半ばの人が多い。

確か、主任という役職を持つカウンセラーも30代半ばあたりの人が多いのに、薫は入社3年目の25歳でその役職に就いたのだ。

そして今は、係長も課長も飛び越えて、部長補佐という役職に就いている。

どんなに頑張っても、今の平社員の自分が薫よりも上の役職に就く事なんて、自分が子供を産むのと同じくらい有り得ない。

(遠すぎるよ…。こんなの絶対追い付けないじゃん…。)


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