ずっと、君に恋していいですか?
薫は帰り道の途中にあるスーパーに向かって歩きながら、相変わらず元気のない志信の横顔を窺った。

(ホントにどうしたんだろう…。私、何か気に障るような事でもしたのかな…?)

いつもなら会社からの帰り道は、夕飯のメニューを相談しながら歩くのに、今日の志信は一言も話そうとしない。

どこか近寄りがたいオーラさえ感じるが、薫は思いきって声を掛けてみる事にした。

「志信、今日は何食べたい?志信の好きなものなんでも言って。」

黙り込んでいた志信が、ゆっくりと薫の方を向いた。

志信はニコリともせず、じっと薫の顔を見る。

「…薫。」

「またそんな冗談言って…。」

薫が笑うと、志信は真顔のままで薫の手をギュッと握った。

「え…?!一体どうしたの?」

志信は困惑する薫の手を離し、目をそらしてため息をついた。

「ごめん、やっぱり今日は帰る。」

突然一人で帰ってしまおうとする志信の手を、薫は慌てて掴んだ。

「ちょっと待ってよ。ホントにどうしたの?」

「……。」

尋ねても何も答えない志信の顔を、薫は心配そうに覗き込む。

「やっぱり具合悪いの?そのまま帰って家に食べる物ある?一人で大丈夫?」

志信は激しく子供扱いされたような気がして、思わず薫の手を振り払った。


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