ずっと、君に恋していいですか?
「…母親みたいな事言うのやめてくれよ。頼りないかも知れないけど…オレ、大人だから。」

「え…?」

薫は志信からの思わぬ言葉に驚いて目を見開いている。

「…ごめん…。」

志信はいつものように薫の頭を撫でようとして躊躇し、その手をグッと握りしめて下に下ろした。

「今日は一緒にいても薫を困らせるだけだと思う。これ以上薫にかっこ悪いとこ見せたくないから帰るよ。ごめんな。」

「志信…。」

作り笑いを浮かべる志信が痛々しくて、薫は何も言えないままでその背中を見送った。

今日は志信の好きな料理を作って一緒に楽しく晩御飯を食べようと思っていたのに、ポツンと取り残されてしまった薫は、仕方なく一人で帰路に就いた。




志信は自宅に帰りつくと、ジャケットを脱いでゴロリとベッドに身を投げ出した。

(オレ、ホント情けねぇ…。)

片手でネクタイをゆるめながら、もう片方の手で顔を覆った。

(薫は何も悪くないのに八つ当たりなんかして…。オレってホントに成長しないな…。)

薫はただ与えられた以上の仕事を一生懸命やって、それが正当な評価を受けているのだという事はわかっている。

それなのに、自分がどんなに頑張っても薫には敵わないのが悔しくて、思わず八つ当たりをしてしまった。

(前にも同じ事して薫を泣かせちゃったのに…。バカだな、オレ…。)





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