ずっと、君に恋していいですか?
夜7時を過ぎた。

薫からの連絡はまだない。

志信はタバコに火をつけてため息混じりに煙を吐き出した。

(土曜日だから忙しいのかな…。)

退屈しのぎにつけたテレビからは、街遊び番組の少し気の早いクリスマス特集が流れてきた。

12月に入り郊外の住宅地では、イルミネーションで彩られた街並みを楽しもうと訪れるカップルや家族連れなど、たくさんの見物客で賑わうところもあるらしい。

クリスマス限定のディナーが楽しめるおしゃれなレストランとか、大人向けの上品な味わいのクリスマスケーキが人気のパティスリーとか、きっと薫が気にもとめないような情報に、スタジオ観覧者の若い女性たちはキラキラと目を輝かせている。


(クリスマスか…。薫とは初めてだな…。)

若い頃は付き合っていた女の子と、それなりに世間のカップルが楽しむようなクリスマスを過ごした。

彼女がいなかった時は気分だけでもと、彼女のいない同僚たちと飲みに行ったりもした。

今年は薫と付き合って初めてのクリスマスになるが、どうやって過ごそうか。


薫は世間の流行りに疎い。

女の子が喜ぶようなおしゃれなお店も甘い物も苦手だし、世間のカップルが浮き足立つようなイベントなどにも、あまり興味はなさそうだ。

(特別な事なんかなくても、一緒にいられたらそれだけでいいんだけど…それでもたまには恋人らしい事もしてみたいかな…。)


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