ずっと、君に恋していいですか?
その頃志信は、近所の小料理屋のカウンター席でビールを飲みながら、小鉢の中の里芋を箸でつついていた。

薫の部屋からの帰り道にあるその店は、前からなんとなく気になっていた。

このまままっすぐ自分の部屋に帰るのもなんだかな、と思った志信は、ちょうど通り掛かったその店に入る事にした。

店内はしぶい大人の隠れ家のような落ち着いた雰囲気で、笑顔の優しい初老の女将さんが店を切り盛りしている。

志信は里芋を口に運びながら、さっきのはちょっと言い方がキツかったかなと、ほんの少し後悔していた。

でも、言ったのは本当の事だ。

薫のためにそうするのが一番だと思ったから、明日からまた仕事だから今日は無理しなくていいと言った。

頭ではそう思っていても、やはり心の中には割りきれない思いがあって、あれだけ会うのを楽しみにしていたのに、結局、薫にとって自分の存在なんて仕事には勝てないんだなと思うと、無性に虚しくも寂しくもあり、それに何より悔しかった。

(やっぱりオレ、女々しいな…。ホントかっこ悪い…。)

あまりにも自分が情けなくて、勢いよくビールを煽った。



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