ずっと、君に恋していいですか?
志信が箸で切り分けたブリの照り焼きを口に運んでいると、渚が志信の顔を覗き込むように見た。

「志信くん、まだ独身なの?」

「独身だけど。」

「8年目か…。危ないね。遠くの支社に転勤とか、あるかもよ?」

「どうだろう、考えた事もないな。渚もまだ独身?」

「独身。バツイチだけどね。」

予想外の答えに、志信は箸でつまんでいたブリの照り焼きをポロリと皿の上に落とした。

「えっ、マジで?博多で結婚したのか?」

「そう。好きだ、結婚してくれってうるさいから。でも結婚して1年くらいで相手が関西に単身赴任になって、半年後には浮気されたから別れた。離婚してまだ半年だよ。」

渚は何食わぬ顔でさらりとそう言って、小鉢の里芋を口に放り込んだ。

「うわぁ…きっつー…。」

「男女の仲って、いくら好きだとか言っても、物理的に離れちゃうとやっぱり無理かなって思った。私と志信くんだって、勤務先が離れて会う回数が減ったらすぐに別れたでしょ。」

「確かにな…。」

よく考えてみると、自分は恋愛が長続きした事がないなと志信は思う。

頻繁に会っているうちはなんとなく続いても、転勤になったりお互いの都合でなかなか会えなくなったりすると、だんだん気持ちが離れてしまったような気がする。


< 68 / 187 >

この作品をシェア

pagetop