ずっと、君に恋していいですか?
薫の髪を拭いた後、志信は先に部屋に戻ってタバコを吸いながら薫を待っていた。

(なんだこれ、色気ねぇ…。久しぶりに裸見たけど…なんかかわいそうで触る気も起きないって…。)

思えばずいぶん長い間、薫を抱いていない。

あんなに薫に触れたいと思っていたはずなのに、今日は薫の裸を見ても、そんな気にはなれなかった。

(薫、疲れきってるな…。こんなんじゃやりたくてもやれねぇっつーの…。)

薫が部屋着姿で部屋に戻って来ると、二人で弁当を食べた。

食欲がないのか、それとも眠いのか。

薫は箸がなかなか進まない。

「ちゃんと食べないと。」

「うん…。」

薫がようやく食事を終えると、志信は弁当のゴミを袋にまとめて立ち上がった。

「オレ帰るから。薫ももう寝ろよ。」

志信はそう言ってコートを羽織る。

「でも…久しぶりに会ったのに…。」

「疲れてるだろ?こんな薫にこれ以上無理させられないから。」

志信が薫の頭をポンポンと軽く叩くと、薫はうつむいて、志信のコートの裾を掴んだ。

「…もう少しだけいてよ…。」

「ん…?」

「もう少しここにいて…。少しだけでいいから…。」

志信はしゃがんで、薫の顔を覗き込んだ。

薫はポロポロ涙をこぼしている。

「泣くなよ…。」

志信がギュッと抱きしめると、薫は志信の胸に顔をうずめた。


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