ずっと、君に恋していいですか?
食事を終えた石田と梨花は、気を利かせたのか一足先に席を立った。

志信はコーヒーを二つ買ってきて、ひとつを薫の前に置いた。

ゆっくりとカップを口元に運び、コーヒーを一口飲んで小声で呟く。

「今日は晩飯一緒に食えないな。」

「付き合いも大事だしね。たまにはいいでしょ?」

「そうなんだけどな。でもやっぱりオレは薫の作った料理が一番好きだし…毎日薫と一緒に飯食いたい。」

ストレートな志信の言葉に、薫は少し照れ臭そうな顔をして、わざとらしく咳払いをした。

「笠松くん?ここは会社ですよ。」

「ああ…そうですね、卯月さん。」



コーヒーを飲み終えて社員食堂を出た二人は、一緒に喫煙室でタバコを吸ってからそれぞれの部署に戻った。


志信が販売事業部に戻り自分の席に着くと、ポケットの中でスマホのトーク通知音が鳴った。


【 今日の晩は会えないけど、
明日は一緒に買い物して帰ろうね。
明日の晩、何が食べたい?
考えといて。 】


薫からのトークメッセージに志信は思わず口元をゆるめて返事をする。


【 薫 】


志信がたった一文字のメッセージを送ると、またすぐに薫からのメッセージが届いた。


【 バカ 】


志信は思わず苦笑いして、真面目に返事をする。


【 帰ったら電話するよ 】


【 わかった 】


志信はスマホをポケットにしまうと、小さくため息をついて会議の準備を始めた。



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